【新人編集者必読】言葉の使い方虎の巻1~ら抜き言葉・い抜き言葉・れ足す言葉・さ入れ言葉~
地方の出版社に勤めて暫く。私自身、そこまで文章が上手いとは思いませんが、若手の皆さんの原稿をチェックすることも多く、毎日のようにがっつり赤入れ(編集業界で、文章に修正を入れること)をしています。正直、あまり人に注意するのが得意ではない性格なので、真っ赤にして返す原稿には心痛みます。
逆にこっちのメンタルがキツいわ!
…と。
イマドキという言葉は好きではありませんが、今の若い方はキャッチーな文章を好む割に、結論があいまいです。要するに、映画で言うなら2000年代の邦画ような雰囲気の文章が得意です。
しかし、我々は「ブロガー」さんではないので、商用の文章を作る必要があります。スタッフのコラム記事や、レポート記事は割と自由に書いてもらっていますが、そうでない場合は、「こちらは話し言葉なので、書き言葉に修正してね」と指示しています。
先にも言いました通り、私は国語の先生のように精通してはいないので下記の内容に間違えがあったらと思うと恐縮ですが、「気を付けてほしいな」と思うポイントを書きとめてみました。
文章作りに不安がある方の参考に、少しでもなりますように。
◆言葉の使い方虎の巻1~ら抜き言葉・い抜き言葉・れ足す言葉・さ入れ言葉~
①こんなの初級!「ら抜き言葉」
口語では「食べられる」の「ら」を抜いて「食べれる」などと言う人も多いのですが、正確な日本語としてはNGです。これを「ら抜き言葉」と言います。
国語力を育てたいママさん、例えばこんなシーンでは…
子ども「まま!ぼく、トマトぜんぶ食べれたよ!」
ママ「『食べれた』ではなく、『食べられた』よ」
と、注意してあげてください。お子さんの国語の点数と、社会に出てからの上司の評価がちょっと上がるかもしれません。
「~することができる(可能)」の意味として使用される助動詞「~られる」だけで発生する誤りです。五段活用以外の動詞では「ら」を抜いてはいけない、のですが、いまさら活用形を思い出せない方、心配は無用です。
「ら抜き」にしてはいけない言葉の見分け方があります。それは、勧誘の「~よう」を付ければ一目瞭然。
「ら抜き言葉」になりうる言葉かどうか確認したい動詞に、「~よう」が付く場合は注意しましょう!
例:
見る※マ行上一段活用→(勧誘)見よう 可能形「見られる」
着る※カ行上一段活用 →(勧誘)着よう 可能形「着られる」
来る※か行変格活用 →(勧誘)来よう 可能形「来られる」
走る※五段活用→(勧誘)走ろう 可能形「走れる」
売る※五段活用→(勧誘)売ろう 可能形「売れる」
※サ行変格活用の「する」は、可能形が「できる」なので該当しません。
活用からしっかり覚えておきたいという方は下記YouTubeで。
しっかり覚えるつもりがない人は勧誘の形が「~よう」になる動詞はら抜きに気を付ける!だけは頭に叩き込みましょう。
②忘れがちな「い抜き言葉」
「ら抜き言葉」は知っていて、普段から気を付けていても、「い抜き言葉」はノーマークという方は原稿を見ていてもそこかしこにいます。翻訳など兼ねる仕事は別ですが、文芸・情報など一般的な校正の仕事はいわばダメ国語サーチですので、「い抜き言葉」を常用している方はしっかり反省してください。
例:い抜き言葉→正しい表現
私は今、走ってます →走っています
テレビを見てました。→見ていました
見てられなかった。 →見ていられなかった
電話してた。 →電話していた
寿司が回ってきてる。→回ってきている
頑張ってます。 →頑張っています
「~してます」と口語でいう方もいますが、それを正確に言うならば「~しています」です。
しかし、これに似た形になる、言葉の最後が形容詞の「ない」となる場合は(例:置いてない)、「置いていない」としません。
い抜き言葉になりがちな言葉かどうか見分け方は、言葉の最後を「ない」と活用してみた際、形容詞の「ない」であれば「ありません」に置き換えることができるので、置き換えられなければ、「い抜き言葉」に気を付けるようにしましょう。つまり、「置く(置かない)」「切る」「噛む」にように、
「い」抜き言葉にならない動詞は、動作の完了を表している動詞である場合が多い。
と、いうことです。
同様に③「れ足す言葉」④「さ入れ言葉」にも気を付けましょう。
「れ足す言葉」
例:飛べれる(正:飛べる) 、行けれない(正:行けない)
「さ入れ言葉」
例:歌わさせて頂きました(正:歌わせて頂きました)
この他、よく接客業で言われる「~になります」の使い方(「こちらお会計になります(会計になるって何?)」のような使い方が多用されています)。助詞の省略など、色々と注意点はありますが、一番に新人編集者の方へ伝えたいのは「自分で書いた文章は読み返せ!」に尽きます。
例えば
イベント「■■」では●●が行われる。また、△△も開催。さらに、○○も。フードブースでは◆◆の販売もあり。
どんだけ「~も」使うんだよ!
って思うことが、週1回はあります。
また、穏やかな性格の人に多いのですが、小説でもないのに曖昧な表現や、独特の形容を多用していたりすると「結局なんなんだ?」と思います。
テレビや情報誌は特にそうですが「結果と、大切なことはおおよそ文頭で分かるように」。特にWebではSEO対策にも、重要なワードは頭におきましょう。
誌面か、Webかでも文章は書き換えが必要です。あらゆることに、その場その場の対応・マナーが求められます。コラムや、口語のブログなどでは、より親近感を読者に持ってもらうため、上記の内容を無視する場合もあるでしょう。
文章の書き方は、いわばドレスコード。
その場その場にふさわしい「言葉遣い」をしていきましょう。ひいては、日本の美しい言葉を守っていくことに繋がります。
次回は「書き言葉」「話し言葉」についてふれたいと思います。>【新人編集者必読】言葉の使い方虎の巻2~文中に使いがちな「話し言葉」10選~