【新人編集者必読】言葉の使い方虎の巻2~文中に使いがちな「話し言葉」10選~
前回の記事>【新人編集者必読】言葉の使い方虎の巻1~ら抜き言葉・い抜き言葉・れ足す言葉・さ入れ言葉~
「話し言葉」「書き言葉」というと、その使い分けが厄介に思えます。
しかし、言葉と言うものはある種、知恵遊び。少しぐらい厄介な方が、味があると思いませんか?
車でマニュアルを選ぶ方もそのような心理なのでしょうか。
フランス語では、「女性詞」「男性詞」と、名詞に性がありますよね。
そういった「面倒な事ほど趣を感じる」というのは人に因りますのでさておいて。
なにより、「話す」コミュニケーションと、「書く」コミュニケーションの違いを追求した形というのが「話し言葉」「書き言葉」の違いです。
◆「話し方」はその場その場の雰囲気や状況で多様性がある
人と話すとき、言葉は(会話に詰まっていなければ)とめどなく流れていきます。時には強調のために主語と述語の順番が入れ替わったり、言葉の短縮形を使ったりします。
短縮形とは、例えば…
ママ「早くパジャマしまっちゃいな(しまってしまいな)さい!」
子ども「後でやるって言っといた(言っておいた)じゃん」
のようなものです。
また、「方言」が使われるのも話し言葉の特徴的です。
◆一方、「書く」は……
主語と述語が入れ替わったり、短縮形・方言を使うと読みにくさを感じます。
また、曖昧な表現も避けるべきですし、言葉遣いも誤解がないような言い回しにする必要があります。
◆文中に使いがちな「話し言葉」10選(私調べ)
(1)すごい
こちらは、特に「すごく」という副詞で文中に使う方が多いように思います。「とても」「すばらしく」「非常に」などに変え、文章に使いましょう。
(2)~から(~だから<理由>の意味)
こちらは「~のため」という書き言葉に直して文中に使いましょう。同様に接続詞では、「(話し言葉)だけど」も多用されますが、「(書き言葉)~だが」に直しましょう。
(3)全然
こちらは話し言葉の場合、「全然~ない」と使うのが正しいのですが、最近は「全然OK!」という誤用もよく使われています。係り結びの言葉についてはこの場で言及しませんが、書き言葉の場合は「全く~ない」としましょう。
それにしても、漢字だけ見ると「まったくしかり」なので、意味合い的には肯定の「OK!」が続いても良さそうですけれどね…そう一筋縄ではいかないのが日本語なのです。
(4)だいたい
書き言葉では「約」「おおよそ」としましょう。
(5)~(な)ので
書き言葉では「~(の)ため」としましょう。これは頻出します。
(6)だんだん
書き言葉では「次第に」「徐々に」にとしましょう。同様に「どんどん」も話し言葉です。書き言葉に直す際は「急速に」としましょう。
(7)なんか
書き言葉では「など」としましょう。この辺りは、若手に書かれると「国語が好きではないのに出版社に入ったのか?」とイラっとします。書き言葉の文章中に「ん」が付くときは気を付けてほしいと思います。
「色んな」「そんな」「こんな」「あんな」「どんな」「~んです」…全部話し言葉です。
「…と、こんな感じに~…」などと記事原稿に書いてこられた時には、もはや憤慨のレベルでした。
読者はお前の友達か?
(8)~とか
書き言葉では「など」「や」としましょう。
(9)~みたい
書き言葉では「~のよう」としましょう。
(10)~って
書き言葉では「~と」としましょう。この他、先ほどの「ん」と同様に「っ」も書き言葉の文章の際、要注意です。(すでに出ている「もっと」も然り)
「こっち」「そっち」「あっち」は書き言葉で「こちら」「そちら」「あちら」。
「ちょっと」は書き言葉で「少し」。
「いっぱい」は書き言葉で「多く」。
「やっと」は書き言葉で「ようやく」。
「絶対に」は書き言葉で「必ず」です。
※「一番」は書き言葉で「最も」など、一概に言えませんが、「っ」が入ることでくだけた雰囲気になる場合は要注意です。
……このほかにも、話し言葉や書き言葉で注意したい語句はいくつもありますが、私が若手の皆さんの原稿をチェックする中で特に多かったものを挙げてみました。
また、漢字の「当て字」「常用外」を使うのも、一般的な出版社では避けています。
当て字の例ですと、「美味しい」や「宜しく」「上手い」などがそうであり、(あなたがメディアを発信している方で個人的なコラムやあえて話し言葉の文体を使っている場合でなければ)ひらがな表記がふさわしいです。
常用外については、あまり普段見ないなという漢字がでたら、「常用漢字チェッカー」などのサイトで確認する癖を付けるとだんだん見分けに慣れてくると思います。
よく若手編集者の方が常用外漢字を使ってしまう例としては、「嬉しい」あたりがそうでしょう。人名漢字ではありますが、常用外なので「うれしい」と表記しましょう。
ぜひ、前回と今回の語句・言葉の使い方で中学校までの国語を復習し、基本を踏まえた日本語を心掛けましょう。
前回と同じ結びになるようで恐縮ですが、とにかく自分の書いた文は「読み返し」をしてください。同じ内容の文章を、3文くらい連続して書いているのを見ると「同じ内容を言葉のレパートリーだけ変えて書き直していくとか……苦行…?」と思います。また、具体的内容のない、形容詞だらけの文章は「イタリア人のナンパか?(かわいい!きれい!の連呼)」と。
これだけツッコんでおいて何ですが、私はメンタル激弱ですし、バイトや若手に甘いと言われて久しいので、本人たちにはオブラートで包んだような赤入れがせいぜいです。
また、前回も文頭に入れましたが、コラムやブログなど口語の文章に関しては、「読んでもらうため目に留まる、引き込まれる文体にする」がテーマですので、若い子たちの感性に任せています。今時、スタッフのレポート記事や、フランクな動画配信は当たり前ですので、今後は一層マスコミの言葉使いも変わっていくでしょう。
しかしながら、基本の言葉使いを知ることで、あらゆる場面で本来伝えたかったニュアンスを十分に表現することができると思います。
(追伸:もし、記載上の間違えがありましたら、お気づきの方ぜひお知らせください。お詫びの上、修正を反映いたします)